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少年愛之美学

平和主義の腐○子による鑑賞と思索。思い付いたまま書き散らしている。

ONE『モブサイコ100』、と絶対少年に跪く凡人の生き方と自己実現について

Web漫画の神と称されるONE先生による超能力アクション漫画『モブサイコ100』について、eikouの視点からひたすらプレゼンさせていただく回です。

モブサイコ100』はeikouが好きな漫画作品の中でも遠慮なく万人にお勧めできる健全な少年漫画で、2016年夏にボンズ社でアニメ化も果たし既に相当数の読者を抱えていることは確かなのですが、敬遠されている理由があるといえばやっぱり絵柄だと思うんですよ。ONEさんが『ワンパンマン』の原作者さんでもあるというのはご承知の方も多いでしょうがあちらは村田雄介さという方が作画担当をしていらしてONEさんの絵ではないんですね、一方モブサイコは作画もONEさん自身がされていまして、ONEさんのイラストは良く言えば味がある、ちょっとディスらせていただくと一見下手、なんですが、あーちょっとデッサンが狂っちゃってるなという残念さはなく、もはやごまかそうともしておらず却って芸術として成立している下手さなんですね。ご本人は一応デッサンを気にして自分の手などを見て描いていらっしゃったりするらしいのですが。百聞は一見に如かずなのでとにかく未読の方には、絵柄で食わず嫌いだけはするなと、これだけを申し上げたい。

さて本題、『モブサイコ100』は生まれつきチート的強さの超能力を持つ主人公モブこと影山茂夫君がなんやかやでエスパー仲間と出会ったり人助けをしたり悪のエスパー組織と超能力バトルを繰り広げたりしながら成長するお話で、モブ君の立ち位置としてはとにかくこれまでの作品を通して闘った相手も認める最強のエスパー、けれども超能力を除いたらただの冴えない中学生。
eikou的にモブサイコのテーマは「自己実現」だと思っているのですが、私の印象ではONEさんの創作態度というのは場面毎に割りと文字で言いたいことがあるような感じがあって、例えばモブ君が新興宗教「(笑)」に拉致られて洗脳を受けそうになるというエピソードのところでは、「自分の人生の主役は自分なのだから、周囲と呼応する即ち空気を読むということは本来求められていることではない」というような、現代社会への問題提起とも言える主張が、はっきりと解るように示されています。

メタ視点から申し上げると主人公モブ君はその語りの部分、作者さん自身の正義を担っているようなところがあり、これはまさに鳩山郁子さんについての記事で申し上げた「装置としての少年」と言えると思うんですが、作品の中においては同時に彼は最強の能力を持つ絶対者で、この絶対的能力・(作者を創造主とするとも言える)作品世界の中での絶対性に周囲の人間が屈してゆく、跪いてゆく、それと自らとの差異即ち自らの限界を受け入れてゆく、という構図が全体を通してあるのかなという気が致します。
自分は選ばれし特別な存在だと思っていたのに実はそうでもないんじゃないか、自分はただのモブ、その他大勢、凡人に過ぎないのではないか、そういった自尊心の瓦解みたいなものは、多くの人が通過する人生のイベントのように思いますけれど、この漫画はそれを中学生にやらせるというのが最高にリアルでエロいのです。

それと、キャラクターが控えめに言ってサイコー。可愛い。エモい。
eikouのイチオシがまずモブの弟、律君です。彼は兄と年子で中1なんですが兄と正反対に容姿端麗スポーツ万能秀才コミュ強でさぞかし兄をナメてるんだろうなと思いきや、実は強大な超能力を使える兄貴を畏怖しているのです。可愛いですね。自分はいくら努力してもできないことを兄は何の努力も無しに軽々とやってのけることが許せないという律君ですが超能力を除けば兄弟のステータスの差は一目瞭然、モブ自身もそこを指摘している訳ですが腑に落ちない様子で、むしろそういう天才の無自覚の余裕が律君の焦りを煽っている。というのが象徴的だなと思いました。つまり所謂サイコキネシスのような「超能力」の話をしているんでは多分ないんです、この兄弟の関係性というのは。圧倒的才能を前に凡人は爪を噛むばかり、こういった、自己実現の追求に付き物の厳しさを、中学生、兄弟、といった適切なモチーフを使って描かれているのです。
まあ劣等感とか何だかんだ抱きつつも律君は兄貴を超能力だけでなく人間性の部分も尊敬してるし大好きなんですよ。兄貴がちょっと困ったことになったら飛んでくる有能なセコムです。ほんと可愛いですね……

この劣等感を如何に克服するべきか、というところを担っているのがテル君こと花沢輝気君だと思うんです。ネタバレは避ける方向で行きたいのでざっといきますが、それまで超能力によって順風満帆で無敵の人生を送ってきて自分は特別な存在だという自信を営々と培ってきたテル君は、なんやかやでモブに自らの凡人性に気付かされることになります。

あぁ…
僕って…
凡人…
だったんだなぁ…

(引用元:ONE『モブサイコ100 2巻』2012年小学館)
アイデンティティーの崩壊はテル君をダメにしてしまうのかと思われたのですが彼は強かった、まず自分の絶対性否定する、つまり盲目的自惚れを捨てる、現実を直視して受け入れる。その上で、では自分は何を持っているのかというのを見定める。テル君はモブ君への敗北を認め持ち前の応用力でその後も活躍していきます。とてもかっこいいです。ここにも私達のより良い生き方のヒントがあるのかなと思ったりするのです。

忘れてはいけないのが霊幻新隆です。モブ君の霊能力を利用して除霊を主とする便利屋を営んでいる成人です。作品の中で一番好きなエピソードが霊幻とモブの喧嘩のお話なんですが、またネタバレ回避のため詳しいことは申し上げずにおきますけれども、霊幻の回想シーンがあるんですね、モブが霊幻のもとにやってきた日を霊幻が回想するのですが、最終的に霊幻は自分がモブ君の能力に憧れていたことに気付くのです。エロいですね。自己実現に関するメランコリーというのは甘酸っぱい青春の特権ではない、大人になっても苦々しい。みたいな感じですかね。
霊幻は基本的にスマートな大人の男、を演出しているし或程度は成功していて、そんな彼でさえ自分よりも10歳下のモブ君に(自分のプライドは確保しながらも)跪いている。この構図が最高に萌え。
というかほんとかっこかわいいんですよね、霊幻新隆、博識で冷静でイケメンで斜に構えて見栄っ張りで胡散臭いけど根は善人、モブに慣れ以上の愛着を持っていて律君セコムが発動してしまいますね。

あとモブ君が青春を徒に過ごすモテない自分を変えようとして肉体改造部という筋トレの部活みたいなのに入るのですがその部員たちがまた、見た目はゴリラなんですが内面はめちゃめちゃ良い男たちで。自分達は既に中学生離れした肉体を持ちより高次元の肉体改造に勤しむのですが、中身はアホな中学生ですし、通常未満の運動能力しか持たないモブ君を心身共に温かく支えているのみならず、その根性に心から敬意を払っているという。優しい世界です。という辺りからなんとなくONEさんは基本的に人間が好きなのかなと、人間を信頼してらっしゃるんじゃないかなとeikouは感じています。性善説ですね。

他にもたくさん素敵なキャラが居ますので是非お気に入りを見付けてください。いや単純にストーリーもめっちゃ面白いです。アプリ「マンガワン」で全話無料配信中!結局ハマってコミック全巻買うことになるんですけどね(※個人の感想です)。回し者ではないです。