少年愛之美学

守備範囲がやや広めの腐女子による鑑賞と思索。

真空ホロウ「アナフィラキシーショック」、と嫉妬・劣等感のエロスについて(神様系BLの話)

※ 製作者様の意図とは一切関係がございません。

もとはスリーピースバンドとして始動し、ギタボの松本明人さんのソロ活動を経て現在はツーピースになったとか、ちょっと現状のよく解らないロックバンド真空ホロウですが、青春のビタースウィートとか窓越しの雨といったところの透明感とか、アンニュイさが素敵な音楽を製作されるバンドプロジェクトです。

その作品群の中でスリーピース時代のアルバム『少年A』収録「アナフィラキシーショック」、eikou的には非常に妄想をそそられる一曲でとても好きです。
タイトルのアナフィラキシーショックとは抗体抗原反応の一種で最悪死に至る危険性のある激しいアレルギー反応のこと。勿論曲中では比喩的に用いられていますがその抗原が「君」。

 君の顔が頭の中をぐるぐる廻っている なんとも言えないこの敗北感

「君」って誰なんでしょうね??????(^.^)

「君」に対して「アナフィラキシーショック」を起こしている「僕」の精神はいったいどういった状態にあるのでしょうか。エッジの利いた重激な曲調とダークポップな歌詞を紐解いてみますと、どうやら「僕」は「君」に対して劣等感を抱いている。しかも目を醒ました瞬間から激しく身を苛むほどの。ただ劣後を自認するのみならず自己嫌悪を伴う、即ち嫉妬を抱いている。
可愛いのが、ストレートに

  今だってそう本当は好きなはずなのにな

こう言っちゃっているところです。本当は「君」に憧れていて、大好きなんだと自覚はしているのですが棄てきれない自己愛もあるから「君」が嫌い。「君」の尊さが「僕」の自尊心を脅かすから。

曲自体のお話をしますと、私の予想では作詞されたギタボの松本さん御本人が、バンドが売れてきて有名なミュージシャン等と会う機会ができていざ憧れのミュージシャンと対面してみれば自分との格の違いを痛感させられた……みたいな、いえ真空ホロウさんは既に邦ロックシーンの一端を担う存在でありますけれども、御本人からするとそんな複雑な体験がおありになったのかな……など、曲の出自を空想してみるわけですけれども、この場合そんな事情など真実は解りませんので今回はこの曲を通じて憧憬と嫉妬と劣等感と、この辺りの萌えを語っていきます。補足ですが「君」を男性であると見て勝手に萌えさせていただいています。その正当性も無いことはないですので後ほど。

主体Sに対して対象をOとします。SがOに自分よりも優れている点を見出だすと、そこに感心、発展して尊敬が生まれる。更に発展するとOの理想化、美化、神格化が起こったりする。それがプライドと屈服の均衡具合によって「羨ましい(妬ましい)」と「尊い」に分岐するんですが両者は実に紙一重なんですよね。というか個人の中でも時によりどちらにも振れてしまう不安定なものであったりいずれにせよ無意識レヴェルでは「尊い」一択だと思うんです。Oを盲信し崇め奉ることもあれば、Oが尊い存在であると解っているからこそそんなOと自分との差異に打ちのめされ、尊い存在になれない自らを悔やむこともあるんですね。そしてこういった感情が浮き彫りになるのってやはり同性だからだと思うのです。比較実験は比較する条件以外の全ての条件に違いがないことが原則ですがまず異性である時点で見方によっては同じ土俵に乗っていないからです。だからやっぱりこの顕著かつ激烈な嫉妬の対象たる「君」は男なのだと思います。思いたい。
それで、「Oの持っているものを自分は持っていない」というのが嫉妬の根本要因で、嫉妬とはOの持っているそれへの渇望であるわけです。「Oの持っているものが欲しい。」すると自ずから「Oになってしまえばいい」という結論に行き着く。そうすればOの所有物は全て手に入る。だから「Oになりたい」と望むようになるのです。

 僕君みたいになりたいと思っていた

 「君になりたい」、そしてこれはまさに「恋」ではないでしょうか。恋とはOが欲しい、Oを独占したいという欲望であって、Oに完全に同一化したいというのは最高の恋、恋の究極だと思うのです。相手との合一を図るギリシャ的恋愛観のエロースの要素もちょっとありますがこの辺りにeikouの思う愛と恋の違いが潜んでいて、今回は省略と言いたいところですがやはり軽く触れておきましょう、私の思うに愛の究極はここではありません。「愛」の場合自分の存在は問題ではなく自分が苦しもうとも相手の幸福を追求するというのが愛で、その究極が自己犠牲のアガペーでしょう。などと書いているうちに2016年の冬アニメ『ユーリ!!! on ICE』のことが想起されたりするわけですがまだ形になっておりませんのでそこは後日。(ユーリについての記事を更新しました。(170628追記))

結論、「アナフィラキシーショック」は神様系男子←プライド高い男子という構図のツンデレラヴソングです。

この、嫉妬による執着のエロスは夏目漱石『こころ』の研究の重要テーマでもありますね。
とりあえずeikouが個人的に今のところ一番好きなBLが「一方的な崇拝と嫉妬を伴う神様系ホモ」でありますからめちゃくちゃフィットしているイメソンです。それから是非是非真空ホロウを聴いてみてくださいませ。個人的おすすめは「娼年A」。なんか石田衣良の小説でこんなんあったな。
ちなみにもし自分がこういった嫉妬や劣等感に苦しむような場面に遭遇したときには、「自分は神のような同級生(男)への劣等感を募らせる冴えない男子高校生であり、この後なんやかやで二人は近付いて余裕ある接吻を頂いたり云々」等と要するにホモに置き換えて考えてみると、自分がすごく可愛く見えたり。いや真面目な話、自分を客観視できて良いんじゃないですかね。ホモは心を穏やかにしますね。

歌詞の引用:「J-Lyric.net 真空ホロウ アナフィラキシーショック歌詞、jーlyric.net/artist/a05439b/l02cdaf.html アクセス日170416」