少年愛之美学

守備範囲がやや広めの腐女子による鑑賞と思索。

鳩山郁子、と架空生物としての少年について

鳩山郁子さんは現在御活躍中の漫画家さんで、雑誌で言うと『ガロ』『アックス』系統、耽美的作風を特徴とされており、銅版画由来の緻密なイラストレーションと難解でシュルレアリスティックな鉱物的文体による芸術性の高い漫画作品を生み出していらっしゃいます。

耽美系ということですが少なくとも美少年もののジャンルに属することは確かで、BLのカテゴリーに入れることも十分可能、というかそうでしょう(最新コミック『寝台鳩舎』はアニメイトで購入したという事実も可能性を広げる)けれども、そう読むのなら頭をフル回転させる必要があります。ボーッと読んでいると公式設定のホモさえ浮かび上がってきません。例えば、

葡萄園に雇われに来た少年とその主人。
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(引用:鳩山郁子『ミカセ』2004年青林工藝舎)
ブレブレで申し訳ないんですけども。
まず状況がよく解らない。なんで変なもの食っちゃったの? 味わうって何? つまりキス??? みたいな。

BLとしては非常に頭を使う部類で、そもそも文章が難解ですから、まさに貴腐人向けという趣がなきにしもあらず、とはいえストーリーもイラストも詩的で非常に美しく、たまらない人にはたまらない、というのは間違いありません。

さて、鳩山さんの作品を最も特徴付けているのは言うまでもなく「少年」であり、ほぼ全ての作品の主人公をはじめ重要人物は少年が占めるであるわけですが、その意味について考えていきたいと思います。
物理的には、未成熟な男の子の身体の危うい美が忠実にスケッチされているのですが、精神的側面から見ると彼らはやや浮き世離れしているという印象を受けるかと思います。どちらかというと理想に近い「少年」で、現実にこのような退廃的思考を持つ子供は居ないだろうとなるです。しかし問題ないのは、彼らは哲学や詩や世界を語らせるための単なる装置として働いているに過ぎないからです。

この、装置としての「少年」は、例えば同じ「フィクション作品のモチーフ」という立場であっても「少女」より架空性が高いように思えます。少女ならば「こんなませた女の子も居るかもしれない。」「こんな淫乱少女もまあ、居ないこともないかもしれない。」という気になるのです。(「少女は小さな女性だ」と言ったのはどなたでしたっけ……)一方おおよそ身体的成長が精神的成長に先行してしまう男子の場合、儚い未熟な肉体を持ち、かつ
「やっぱり僕は、僕の目で自分が写った写真を見てみたい フレイザーさん、あなたに殺されるならば予め銀板の上で死ぬ事くらい本当に何でもない」(引用:鳩山郁子『ダゲレオタイピスト』2009年青林工藝舎)
こんな悟ったような言葉を吐く個体などほぼファンタジーの領域です。
この辺りの深い議論はまた後日言及しますので今は感覚として納得していただけると幸いです。

しかしやはりJUNE系を筆頭に、ある分野の芸術ではこの妄想の世界にしか棲まないような架空的「少年」が強く希求されます。なぜそのある種の妄想を担う装置が「少年」でなければならないか? という問題はやはり例のA感覚に帰結しましょう。
仮説①、非実在或いは存在が稀有という意味で架空生物である「少年」、すなわち「観念としてのA=anusを自覚的に開放した少年」とは、開放されたAを入口とする世界=宇宙を内包している(口腔から直腸に至る空洞、即ち消化管の文字が「管」たるゆえんは、A感覚の第一の性質である)。
仮説②、古来より刹那性の象徴である(『ヴェニスに死す』等)少年は、ソクラテスのエロス論に基づけば、自分に欠乏するもの=永遠性を渇望し、その切ない憧れとしての「永遠性に対する性欲」こそA感覚=原始的性感と言えるので、何よりも根源的存在である。

①または②故に、「少年」は世界を語る権利ないし義務を保有する。

芸術作品、まあこの場合は漫画なのですが、における「少年」という装置の意味についてのeikouの考察はさしずめこんなものです。よく解りませんがとりあえず少年同士が精神的或いは肉体的に交流するととてつもないビッグバンが起こりそうな気がしますね。BLは宇宙。

最後に、鳩山さんのコミック『月にひらく襟』収録の「歪み絵の少年」がこれまでeikouの通ってきたあらゆるBLの中でも五本の指に入る至高のホモであることをここに主張しておきます。教師→生徒の悲恋です。

ところでBLやホモやゲイ等言葉上の諸事項についてはまた後日言及します。


こんな感じで緩やかに更新していきたいと思いますのでどうぞ宜しくお願い致します。